
映画

- 完全版 -
コメント集
(敬称略)
緒方 貴臣(映画監督)
『飢えたライオン』監督
生きる意味を求め、何者かになろうと苦悩する若者たち。
あの公園の「ピエロ」の出現で、白と黒の世界に色彩が加えられ、
「青の時代」から「バラ色の時代」へと移行する。
観る人すべてに「あの頃」の記憶が蘇る。
根岸 憲一(撮影監督)
『淵に立つ』撮影
最初は狭い世界で生きていると思い込んでいる人物たちにリアリティが無く、
その仲間がつながっていく事によってリアリティが生まれてくるのかと思いきや、
そうでもなく。
でも、見ていくうちに、これはドキュメンタリーなんだって気がついて、
リアリティではなく仮想リアルが見えてきた時に驚きました。
映画の新しい分野が生まれたと感じると共に、映画にはリアルは無く、
計算して作られたリアリティで出来ていますが、この作品はドキュメンタリーだと思うのでリアルが表現されています。
映画的にはリアルは深い理解になりにくいのですが、最後の登場人物たちとリアルなダンスに共通する何かを感じた事が印象に残りました。
曽我 真臣(俳優)
『カメラを止めるな!』出演
この作品で一番に感じた事は、
人間関係が作られていく様子がかなりのリアリティで描かれている事だ。
序盤はお世辞にも魅力を感じられない人物達が、最低限のセリフで徐々に輝いて見えてくる。
印象に残るセリフも多く、大きな出来事が起こらないこの作品において
非常に大きなアクセントになっている。
主人公葛城は中々登場人物としての魅力が見えてこないのだが、
普通ならイラっとくるがなぜか憎めない葛城のキャラクターを品田さんが絶妙に
演じられていて、そのキャラクターで接する他の登場人物の魅力が先に掘り下げられる。その人物達と葛城の会話の中で、葛城の魅力が引き出され、還元される。
なるほど、夢中になっている自分がいる。
この作品から何を感じ取れるかは、人によって随分変わってくると思う。
どのシーンにどの人物の立ち位置で感情移入するかで、180度感想が変わる事もあるかと思う。大変興味深く不思議な魅力がある作品で、初めて観賞したが、既にまた観たくなっている自分がいる。
是非劇場でモラトリアムの不思議な魅力に触れていただきたい。
浅森 咲希奈(女優)
『カメラを止めるな!』出演
自分は何者であるのか。
何が好きで、何をしたいのか。
そんなことを追い求めていたあの頃の自分を重ね合わせ回顧した、
不思議な映画体験をしました。
この映画を観終わった今のあなたは
あの日、あの頃を
どのように感じるのでしょうか?
ぜひ劇場で『モラトリアム』の世界を体験してほしいです。
松崎 まこと(映画活動家/放送作家)
温もりに救いを求め、寄り添うために身体を重ねることだってあるだろう。
でも多分、その行為に意味を見出そうと、すればするほどに、
心はすれ違っていくものなのか…。
メンヘラと、一言で片づけることなかれ。
品田誠をはじめ、いまだ知られざる若者たちが演じる、真っ直ぐに生きていくためのエゴイズム、煩悶と哀しみから、希望の光が垣間見えた。
藤原 季節(俳優)
『すじぼり』主演
僕らは誰かとの出逢いの中で自らが孤独であることを知り、
やがて相手の孤独に触れようとしてみることで、関係が生まれる。
2018年8月2日。満員の客席もまた、心が触れ合い関係が生まれる瞬間を待ち望み、映画『モラトリアム』を見つめていた。
でもこの映画の圧倒的孤独は、僕らを物語には立ち入らせなかった。
触れようとしたその瞬間に離れていく物語を、映画館にいた全員がただ見つめるしかなかった。
そしてそれは素晴しい映画体験だった。
上映後、映画館の廊下で主演の品田誠と目が合った時、僕らは同時に泣いた。
誰かの人生そのものと言える映画をスクリーンで全員で見つめる贅沢が、
胸を締め付けた。
清水 文太(アーティスト)
この映画を観た時と、観ている最中、観終わったあと、
全ての感覚が違って面白かった。
モラトリアム。いわゆる、僕らくらいの世代における、猶予期間といわれる意味の
文字列が題名になっているということに映画としての違和感を持って観ました。
どんなものなのか。どんな形で伝えるのか。
観ている最中、何を伝えたいのか正直わからなくなることもあって、途中で少し寝て
しまう瞬間もあって。白昼夢のように現実か映像なのか、わからなくなる。
不思議な感覚でした。
そして、終盤に差し掛かるに連れて、何を伝えたいのか見えてきました。
僕は、未来がどうなるのかなんて、わからないし、生きている世界と死んだ後の
世界の違いだってわからない。
この文章を書いている最中に隕石が降ってきて死んでしまうかもしれない。
思いもよらぬ才能が開花して、今とは全く違うことをしているかもしれない。
そんなことだって、わからない。
ただ、一つ言えるのは
自分の解釈を持って絵で旅をし、ダンスをし、それをピエロに投影する女性だって
女性から男性になってこの地に立ち、舞台を作りたい青年だって
他人の思い出作りを重ねながら自分とは何かを探し続ける主人公だって
いつ、終わってしまうかわからない不安定なものに向かって進んでいる。
橋から少しずつ舞い落ちていくレジ袋のように
空に飛んで行ってしまった黄色い風船のように
どんな風に旅路を歩むのかわからない。
わからないことだらけだから、僕らの人生は面白くて、生きていける。
僕にとっての、モラトリアムは 人生すべてだと思っているから。
まあ、少なくとも、僕はこの文章を書くまでに隕石が降ってこなかった。
そんな、小さな、少し先の未来を想定しながら、
それもわからないまま 生きていけたらいいなと思った。
そんな映画でした。
ヒナタカ(映画ライター)
誰にでも、他の人にはわからない大切な存在はある。だけど、その存在と関われる時間がずっと続くとは限らない。
映画でしかなし得ない美しい映像と、哲学的思考とのアンサンブル。
画(え)に見惚れる93分だった。
ANTIBODIES Collective 東野祥子(ダンサー/振付家)
淡々と紡がれる時間の中で、 その時代にしか感じることのできない震えるようなことを探している。 誰もがピエロを探しているかも知れない。 誰もがピエロになりたいかも知れない。 誰もが何が正しいなんてわからない。 誰もが何かを必要としている。 部屋で踊っているシーンがとても好きです 。